選挙運動におけるSNSの利用は、近年ますます注目を集めています。【兵庫県知事選挙における戦略的広報:「#さいとう元知事がんばれ」を「#さいとう元彦知事がんばれ」に】というnoteが公開され、その内容が話題となっています。SNSを駆使することで、候補者のメッセージや政策を迅速に伝えることが可能となり、有権者との距離を縮める効果が期待されています。しかし、SNSでの選挙運動が行き過ぎると、選挙法違反にあたる可能性があり、特に「報酬を払うことでSNS運動を依頼する」という行為は、買収と見なされる場合があります。この微妙な線引きについては、現行法でも明確に定義されておらず、多くの疑問が生じています。本記事では、選挙におけるSNS運動の問題点とその法的な位置付けについて、詳しく解説していきます。
1. 選挙運動とSNS:報酬の有無がカギ
選挙運動の方法としてSNSが利用されるようになり、その影響力は日に日に増しています。しかし、SNSを使った選挙運動には注意すべき点が多くあります。特に問題となるのは、報酬を支払いSNSで選挙運動を行わせることです。選挙運動において、報酬を払ってSNSで活動を行わせることは、選挙買収に該当する可能性があります。具体的には、報酬を払って候補者を支持する投稿を行わせることは、明らかな違法行為となります。
一方で、単純な労務の範囲であれば、法的に問題ない場合もあります。たとえば、SNSの投稿内容を考えること自体は、選挙運動にあたらない可能性があります。しかし、この線引きが非常にあいまいであり、実際には何が選挙運動に該当し、何が単純労務に該当するのかが難しくなっています。
2. 何が選挙運動で、何が単純労務なのか?
SNSで行う選挙運動と単純労務の違いは、非常に微妙です。例えば、報酬を支払い、誹謗中傷に対する反論を投稿する場合、これ自体は選挙運動に該当しないとされています。しかし、反論の投稿の後に「投票をお願いします」などの投票依頼が含まれると、それは選挙運動にあたり、違法となります。このように、選挙運動の一環として行われる「投票依頼」や「支持呼びかけ」が含まれる場合、その行為は買収と見なされる可能性があります。
さらに、単に投稿すること自体に関わる報酬の支払いだけでなく、選挙戦略を考えさせる行為も問題となります。投稿内容を作成させること自体が選挙運動にあたり、これは選挙法に違反する可能性が高いです。このような行為が行われると、選挙活動としての適法性が疑問視され、選挙買収の対象となります。
3. SNSにおけるBOTやリポスト、引用の扱い
SNSでの選挙運動において、BOT(自動化されたアカウント)やリポスト、引用など、法的に曖昧な部分も多く存在します。現在の法規定では、BOTやリポスト、引用などの具体的な運用に関して十分な規制が追いついていないため、選挙運動の際にこれらをどのように利用するかが問題となります。
例えば、BOTを使って特定の候補者を支持する投稿を自動的に拡散させることが、買収にあたるのかどうかは明確に定義されていません。また、リポストや引用によって候補者のメッセージを広めることも、選挙運動にあたるかどうかは一律には判断できません。このように、SNSを用いた選挙活動には法的な不確実性が残っており、候補者側は注意を払わなければなりません。
4. 落選運動と報酬の関係
SNSで行う「落選運動」に関しても同様に、報酬を支払って行わせることは選挙法に違反する可能性があります。落選運動において、特定の候補者をターゲットにしてSNS上で誹謗中傷や批判を行わせることは、選挙買収の一種として認識されることが多いため、報酬を支払うことは違法とされます。このような行為が横行することは、選挙の公正さを損なうだけでなく、有権者の信頼を失う結果を招きます。
5. 現行法の問題点と改革の必要性
現行法では、SNSを利用した選挙運動に関する規定が十分に整備されていないため、選挙結果が出た後に違法行為が発覚しても、その時点での対応が難しくなります。選挙活動がSNS上で行われる現代において、法規制が追いついていないことが問題です。
特に、選挙戦においてSNSが過剰に利用されると、候補者同士の攻撃や煽動が目立ち、選挙離れを引き起こす原因となります。このような状況を防ぐためには、選挙運動におけるSNS利用に関して、より厳格な規制を設けることが求められます。具体的には、「候補者等が投稿に対して報酬を払う」こと自体を規制することが効果的です。これにより、SNS上での選挙活動の透明性が高まり、公正な選挙が行われることを期待することができます。
6. これからの選挙に向けた対応
今年行われた都知事選挙や衆議院選挙、兵庫県知事選挙などでは、SNSを使った選挙運動に関して予想外の事態が起きました。これらの選挙では、SNSを使った不適切な選挙活動が問題視され、選挙活動の透明性が問われました。来年の3月16日には千葉県知事選挙が予定されていますが、選挙運動におけるSNS利用が適切に規制されていない現状では、再び問題が発生する可能性もあります。
良識ある選挙を実現するためには、公職選挙法の改正を進め、SNSを使った選挙運動に関するルールをより明確にする必要があります。選挙運動がSNSに依存する時代において、選挙の公正さを守るためには、法改正が急務であると言えるでしょう。
本記事では、選挙におけるSNS利用の問題点と、その法的な側面について解説しました。選挙活動においてSNSの利用は重要な役割を果たしていますが、その利用が不適切な場合、選挙買収にあたる可能性があることに留意する必要があります。選挙法改正が進み、より公正で透明な選挙運動が実現されることを期待しています。